2024/12/06 11:30
北海道生活

北海道 宿根草の育て方|12月 根雪になる前にできる作業

北海道のバラや宿根草、芝生や樹木、病害虫についてなど季節のお手入れ・管理をプロの皆さんが伝授。ここでは、「宿根草・草花」についてお伝えします。

文・写真:高林 初さん(苫小牧市・観光庭園 イコロの森)



宿根草の庭、根雪前に済ませておきたい作業


北海道は根雪になる季節となりました。近年は気候変動の影響で、年末でもまだ積雪のないエリアもあると思います。根雪になる前にできる作業を今回はお伝えしいきます。


●積雪前の刈り込み

宿根草の刈り込みは、積雪がなければまだ作業は行なうことができます。

北海道 宿根草の育て方|12月 根雪になる前にできる作業

刈り込み作業を終えた「イコロの森」のボーダー花壇

積雪前に行なう大きな理由の一つに、作業の効率性があります。雪で立ち枯れた葉茎が倒れて地面に張り付くと、一気に作業がやりにくくなりますので、今シーズンのラストチャンスです。春までそのままにすると、融雪時にすでに新芽や新葉が混じって作業がさらに行ないにくくなる場合があるので、初心者の方は積雪前に済ませることをおすすめします。

常緑種は刈り込みしないので注意しましょう。刈り込むことで枯れてしまうこともあります。冬の間に茶色く枯れた部分は、雪解け後に取り去るだけでよいです。

・刈り込みをしない主な種類:クリスマスローズ、ヒマラヤユキノシタ、ユーフォルビア ミルシニテス、ユーフォルビア アミグダロイデス、イベリス、カレックス、セスレリア、ペンステモン、ラムズイヤーなど。

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プルモナリア(常緑種)の葉は刈り込まずに越冬させる

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フェスツカも常緑のグラス類なので刈り込まない

立ち枯れた様子を積雪後も冬の風景として鑑賞したい場合は、そのままにしておくことも可能です。上記の作業性のリスクも考慮し、ご自身に合った方法で行ないましょう。ススキなどの茎のしっかりしたグラス類は残してみてもよいかもしれません。

北海道 宿根草の育て方|12月 根雪になる前にできる作業

一部、刈り込まずに雪とのコラボレーションを楽しむ場合もある。写真はススキ


花壇の掃除と循環の考え方

花壇に刈り込みのあとの残渣(ざんさ)、周囲の樹木の落葉や枯れ枝などがあれば、冬の間に害虫や病気の温床になるリスクもありますので、きれいに取り除きます。
それらを花壇の上に置いたまま腐植化させて堆肥にするという考え方もありますが、病虫害のリスクに加え、腐植化に時間がかかることで見た目もよいものではないため、できれば掃除を終えたあとに、あらたに完熟の腐植を加える方がよいでしょう。

「イコロの森」では、落ち葉はPP製の袋に入れて2~3年かけて腐葉土をつくっています。

北海道 宿根草の育て方|12月 根雪になる前にできる作業

落ち葉を入れたPP製の袋

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2~3年後、しっかり腐葉土ができあがっている!

また、刈ち込みで出たごみや剪定した枝は、イコロの森の場合は園内で育てている馬の糞(ふん)や発効促進剤(米ぬかなど)を混ぜて、自家製の草堆肥をつくっています。

北海道 宿根草の育て方|12月 根雪になる前にできる作業

刈り込みで出たの大量のごみ

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この機械で粉砕。家庭用の小さなシュレッダーもある

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粉砕後、これを馬ふんなどと混ぜて堆積しておく

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堆積中の草堆肥、現在の様子。来年か再来年には花壇に戻すことができる

家庭の庭でも適したサイズのコンポストヤードや家庭用のガーデンシュレッダーなどを利用することで、堆肥をつくってリサイクルすることは可能ですので、ぜひ試してみてください。
腐葉土や堆肥づくりなど、庭で出た不要なものを有効利用できると、よりガーデニングが楽しく感じます。


花壇の清掃後はマルチングを

花壇を掃除したあと、5~8㎝の厚さで腐葉土や堆肥を敷き詰めるとよいでしょう。土壌改良や植物の生育をよくするだけでなく、地温の急変防止(防寒対策にも)や保湿効果、修景効果や雑草を抑える効果などが見込めます。上記でつくった腐葉土や堆肥でなくても、市販の馬ふん堆肥やバーク堆肥などでも大丈夫なので、利用してマルチングを行なってください。

北海道 宿根草の育て方|12月 根雪になる前にできる作業

イコロの森では、PP袋でつくった腐葉土を刈り込みと掃除後の花壇に敷き均している


移植・株分けと温室での管理

移植や株分けは、今からの季節は行ないません。やむを得ず掘り上げる必要がある場合は、土壌が凍る前に掘り取ってハウス内で管理します。ハウス内で株分けなどの作業を行なったら、簡易なビニールポットなどに植え込んで春まで温室で管理し、春を迎えたら花壇に植えます。冬期間の温室の温度は マイナス5℃~10℃くらいが理想です。土が乾いたら潅水も忘れないように行ないます。

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今秋、掘り上げた宿根草

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株分けなどの作業ができるまで遮光してハウス内で養生中

プロフィール


高林 初

英国Writtle College(リトルカレッジ)にてガーデンデザインを学ぶ。現在は、苫小牧市にある「イコロの森」の勤務、ヘッドガーデナー 。設計からメンテナンスまで庭づくりの幅広い経験をもとに、宿根草ガーデンの管理・栽培等を担当。

Instagram ikor_no_mori
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