2024/10/14 15:00
北海道生活

若者が農業に抱いた夢!白糠町で有機栽培に挑戦する大豆農場

北海道東部に位置する白糠町(しらぬかちょう)。海と山が広がる豊かな自然に囲まれたこの町は、新鮮な食材の宝庫として知られています。そんな魅力的な土地に、農業への夢を抱いて移住してきた若者がいます。田中 詠悟さん、28歳。札幌出身。音楽好きの青年が、全く縁のないこの地で大豆農家として新たな人生を歩み始めました。
そして現在、無農薬・有機栽培にこだわり、大豆を中心に農作物を育てる田中さん。彼がどのようにしてこの町を選び、夢を叶えていったのか、その軌跡をご紹介します。

若者が農業に抱いた夢!白糠町で有機栽培に挑戦する大豆農場

田中 詠悟さん。白糠町に移住し、無農薬・有機栽培にこだわった大豆農家をスタートさせた

音楽から農業へ予期せぬ転機


田中さんは元々、音楽が大好きな若者でした。ギターメーカーが運営する養成機関で楽器製作を学び、その道に進むつもりでいました。しかし、リーマンショックの影響で就職が困難となり、最終的に和洋菓子を取り扱うお菓子会社に就職。毎日どら焼きをつくる中で、「自分はやはりものづくりが好きだ」と再確認したそうです。

「人間が生きていくために絶対に必要なものを自分の手で生産し、それを売って生計を立てる。それは、とても素晴らしい生き方だと思います」と田中さん。そして自分の好きな‟ものづくり”の延長線上に、農業があることに気づき会社を退職。農家を目指す決意をしたのです。

若者が農業に抱いた夢!白糠町で有機栽培に挑戦する大豆農場

田中さんが白糠町で栽培している大豆。有機栽培・無農薬にこだわり、‟食べた人が健康になる作物づくり”を目指している

新規就農者支援がある、白糠町との運命の出会い


新規就農を目指す田中さんが白糠町と出会ったのは、ある農業フェアでした。各市町村が集まり、その土地での農業について説明を受けられるイベントで、田中さんは「農地を貸してほしい」という要望を各ブースで伝えて回ります。しかし、農地の交渉は非常に難しく、ほとんどのブースで断られてしまいました。しかも、農地を借りるためには必ず農業研修を受けなくてはならず、そして研修を終えても必ず借りられると限りません。

そんな中、唯一受け入れてくれたのが白糠町でした。白糠町は離農者の増加により、農地が手つかずになるという問題を抱えており、田中さんと白糠町の思いがマッチしたのです。
また、白糠町には「白糠町新規就農者支援事業」という支援制度があり、田中さんはその手厚い支援に驚いたそうです。農地取得に加え、農業経営に必要な施設設備、農機具の購入、鹿柵設置などの経費に対する助成、さらには最大5年間の経営安定化支援や家賃助成まであり、農業のスタートはもちろん、安定するまで見守ってくれるのです。
「これはほかの自治体にはない、大きな特徴で魅力でした」と田中さん。

若者が農業に抱いた夢!白糠町で有機栽培に挑戦する大豆農場

畑になる前の様子。これが畑になるとはなかなか想像つかないけれど、この土地がすべてのはじまり(画像提供:田中さん)

若者が農業に抱いた夢!白糠町で有機栽培に挑戦する大豆農場

こちらが現在の様子。 大豆が立派に育ち、農地に息が吹き込まれたような力強さを感じる

昔ながらの方法を守るこだわりの大豆栽培


現在、田中さんが主に栽培しているのは大豆です。品種は「トヨムスメ」と「とよみづき」で、生育の早い「早生(わせ)」と「晩生(おくて)」をあわせて栽培しています。特筆すべきは、無農薬・有機栽培にこだわっている点です。
「無農薬にこだわり、安心・安全に召し上がっていただけることが一番の特長です」と田中さん。さらに、昔ながらの農家が行なっていた「ニオ積み」という収穫方法を取り入れているのも特徴的です。この方法では、刈り取った大豆をパレットの上に山のように積み、数週間自然乾燥させます。これにより豆の栄養や旨みが凝縮され、美味しい大豆ができあがるのです。

若者が農業に抱いた夢!白糠町で有機栽培に挑戦する大豆農場

ニオ積みの様子。 見た目はなんだか可愛らしいが手間暇がかかる作業のため、現在ニオ積みを行なう農家は少ないそう(画像提供:田中さん)

無農薬栽培の最大の課題は、雑草との戦いです。田中さんも当初は苦戦していましたが、今年(2024年)は北海道十勝の音更町の農家さんから専門的な指導を受け、見事にきれいな畑を実現。その結果、去年の倍以上の収穫量を見込んでいるそうです。
「すべて一人でやっているので、収穫量が増えると必然的に機械の導入なども視野に入れていくことになりますが、今後も、味へのこだわりを最大限に持って栽培していきたいと考えています」。

若者が農業に抱いた夢!白糠町で有機栽培に挑戦する大豆農場

去年(2023年)の様子。どれが大豆でどれが雑草かがわからないくらい草が生い茂っている(画像提供:田中さん)

若者が農業に抱いた夢!白糠町で有機栽培に挑戦する大豆農場

今年(2024年)の畑の様子。 除草対策を学んだ結果、収穫量が去年の倍以上に伸びたそうで、無農薬栽培における除草がいかに高い壁になるかがわかる

さらに、現在の畑に加え、新たに2ha(ヘクタール)ほどの農地の整備も進めているそうで、「小粒大豆やあずきにもチャレンジしてみようと思っています。枝豆なんかもやれたら楽しくなるなぁと、今からワクワクしています」と、目を輝かせて語る田中さん。

若者が農業に抱いた夢!白糠町で有機栽培に挑戦する大豆農場

現在整備中の新たな土地で。頭の中にはチャレンジしたいことがたくさんあるようで、今後の田仲さんの活躍にも期待が高まる

白糠町の豊かな自然と、あたたかい人々


「白糠町はとにかく自然が豊富で、この畑での毎日はとても気持ちがよく、楽しいです」。人工的なものが全くない大自然の風景に、田中さんは日々心を癒されているそうです。
さらに、人の優しさも白糠町の大きな魅力だといいます。「皆さんすぐに受け入れてくださって親切な方が多いです。私と同じように新規就農で白糠町に移住した方たちや、近隣の農家さんとの交流もあり、白糠町には一人で来ましたが、今となっては仲間もできました」。

若者が農業に抱いた夢!白糠町で有機栽培に挑戦する大豆農場

「毎日楽しい」と話す田中さん。絵はがきのように美しい大豆農場の景色は、田中さんの支えにも!

最後に、「もし農業をやりたいと悩んでいる人がいれば、ぜひ白糠町に来てチャレンジしてみては? と、背中を押したい気持ちでいます」と田中さん。
豊かな自然、あたたかい人々、そして手厚い支援制度。白糠町には、新たな農業の夢を実現するための環境が整っています。田中さんのように、この地で新しい人生を歩み始める若者が、今後も増えていくことでしょう。


田中農園

住所/白糠郡白糠町庶路基線205番2

問合わせ先・E-mail/tanaka.eigo@outlook.jp



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