2023/10/24 16:39
北海道生活
北海道 郷土料理 歴史のレシピ|三平汁 冬の蝦夷地で暮らす知恵
北海道の開拓が始まって150年以上。この歴史を支えてきた北海道の各地域の「歴史のレシピ“郷土料理”」。今回は、松前町(まつまえ町)の「三平汁(さんぺいじる)」。昆布と水、塩漬けの魚、あり合わせの野菜だけで調味料は要らない、保存していたものを使ってつくる料理。長い冬の蝦夷地で暮らす人の知恵だった――。
【松前町】三平汁(さんぺいじる)
北海道の郷土料理として知られる「三平汁」だが、その起源は定かではない。江戸時代には蝦夷地でアイヌの汁物「サンペ」が紹介されている記録があり、奥尻島には斉藤三平さんという人がふるまったという説も。道南の松前町では、江差町がニシン漁で沸き北前船での交易が盛んだったころ、有田から松前藩にもたらされた「三平皿」に盛りつけて出されたのが始まりだという。
三平汁の作り方はいたって簡単。昆布と水、塩漬けの魚、あり合わせの野菜だけで調味料は要らない。これは、長い冬の蝦夷地で暮らす人々の知恵だった。ニシンやホッケなど魚が獲れる時期に塩漬けにしておき、秋までに採れた野菜を保存しておく。そして食べ物がなくなった頃に、保存していたそれらを三平汁にして食事に出していた。
魚の獲れる北海道各地では、小樽方面では塩鮭、根室方面では塩ダラと魚の種類も変わる。同じ地でもホッケやニシンが獲れればそれを使う。現代では、市販されている塩漬けの魚でも十分においしい三平汁ができる。昔ながらの製法で鮭と塩を山積みにして漬けた「山漬」や、ぬかと塩で漬けた「ぬかニシン」や「ぬかホッケ」などでもよい。塩漬けの魚と昆布だけから出る旨みが、朝夕でも飽きない味にしてくれる。
三平汁のレシピ(4人分)
[ 材料 ]
・鮭の山漬け 2切れ(糠ニシンや塩漬けの魚でもOK)
・昆布ダシ 1,000ml
・日本酒 100ml
・ダイコン 200g
・ニンジン 50g
・ゴボウ 50g
・じゃがいも 2個
・長ネギ 1本
【1】
昆布ダシをつくる。炊飯器で昆布を水にひたし、保温にしたまま1時間おいておくとよいダシがとれる。
【2】
塩漬けの鮭は沸騰した湯にさっとくぐらせて、水で冷やす。ダシのにごりや雑味を取るための、日本料理のひと手間
【3】
【1】のダシと日本酒を火にかけ、弱火でことこと煮込む。最初に固いダイコン、30分くらい経ってから鮭、それから残りの野菜というように、40~50分ほど時間をかけると野菜に味がしみる。野菜は一口大でよいが、飾り包丁を入れると見た目も美しい
【4】
味をみながら、塩味が足りない場合は少々の塩を足してもよい。お好みで白髪ネギをのせて完成
■松前町郷土資料館に、三平皿が展示されている。家庭でもよく使われており、深みのある中皿は、大ぶりに切った野菜や魚の切り身を盛り付けるにょうどよいサイズ。