2024/08/01 15:00
北海道生活

ポタジェ|野生動物の侵入を防ぐ!「電気柵」設置のアイデア

近年は、住宅地まで野生動物が現れるようになり、菜園や庭への侵入に悩まされている人も多いのでは? 今回は、鳥獣害対策の一つとして電気柵設置のアイデアをご紹介します。
このコーナーでは、季節ごとの野菜やハーブ、花や果樹など、相性のよいコンパニオンプランツを組み合わせながら育てて楽しむ“ポタジェのある暮らし”を紹介していきます。お料理や花のクラフトも。

文・写真:藤井 純子さん(ピュア・ポタジェ代表)



近年、郊外の家庭菜園だけではなく、住宅地の菜園にもキツネなどの小動物のほか、鹿(シカ)のような大型の野生動物まで現れるようになり、せっかく育ててきた野菜や花などが食べられてしまうことに、頭を悩ませている方も多いのではないでしょうか? そこで今回は、対策の一つして電気柵設置のアイデアをご紹介したいと思います。

ポタジェ|野生動物の侵入を防ぐ!「電気柵」設置のアイデア

電気柵でポタジェ(菜園)の周囲を囲い、野生動物の侵入を防いでいる

我が家のポタジェ(菜園)は札幌市の郊外にあるため、キツネやアライグマ、鹿などが現れて、食べごろになったトウモロコシやエダマメ、スイカなどが狙われてしまうことが悩みのタネでした。
「食べごろがわかるなんてスゴイな」と感心しながらも、当然「何か対策はないものか…」と考えていたのですが、「電気柵」は電気が流れるので怖い印象がありました。ただ、よく調べてみると、それほど怖いものではないことを知り、実際に設置してみたところ被害も減少して効果を実感しています。

鳥獣害侵入防止ネットなどで菜園の周囲を囲う方法もありますが、手先が器用なアライグマなどはネットの下をくぐったり、ネットをよじ登ったり、破ったりして中に侵入する場合があります。また、北海道などの積雪のある地域では、設置や撤去の手間がかかります。電機柵はコツをつかめば意外と簡単に利用することができます。

電機柵とは――


「電機柵」は、ワイヤーに電気を流して触れた動物にショックを与えることで「痛み」を学習させ、それとともに「怖い」と感じる心理から、柵に近づかなくなる効果が期待できるものです。
「強い電気が流れているのでは?」と心配する人もいると思いますが、電流は6,000~10,000V(ボルト)といわれ、動物を殺傷するほどの電流ではなく、人が触れても強い静電気を受けた程度の痛みなので、過度に心配することありません。ただし、メーカーの説明書に記載されている注意点はしっかりと守るようにしてください。


●電気柵のタイプ

電気柵の種類には、家庭用コンセントにつないで使用するACアダプター式やバッテリー式、乾電池式、ソーラーパネル式などがあります。私が使用しているのは、ソーラーパネルと電池の両方が使えるタイプ。ソーラーパネルは電気代がかからないことと、電源がない場所でも使用できるメリットがあります。設置してから10年近くになりますが、曇りや雨の日が続いても問題なく使用できています。

ポタジェ|野生動物の侵入を防ぐ!「電気柵」設置のアイデア

ソーラーパネルは、日光がよく当たる南向きに設置する


支柱の種類

使用する支柱は、電気柵の専用の支柱となります。いろいろな高さの支柱がありますが、我が家のポタジェでは、185cm・太さφ20mmの支柱を使用しています。以前は高さが低い支柱を使っていましたが、鹿が軽々と飛び越えてしまったため長い支柱を購入しました。

ポタジェ|野生動物の侵入を防ぐ!「電気柵」設置のアイデア

鹿のジャンプ力はすごいので、長い支柱をセレクト

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長さ185cm・太さφ20mmの支柱を使用

支柱は、しっかりと安定するように20~30cmほど地面に挿します。ただし、菜園の周囲などの土が固く挿すのが大変な場所は、あらかじめカナヅチなどで鉄の棒を叩き、穴をあけてから支柱を挿すと無理なく簡単に設置することができます。

ポタジェ|野生動物の侵入を防ぐ!「電気柵」設置のアイデア

支柱は20~30cmほど地面に挿す

ポタジェ|野生動物の侵入を防ぐ!「電気柵」設置のアイデア

土が固ければ、あらかじめ鉄の棒などで穴をあけておく。打ち込み丸カンを使用

電気柵の設置のアイデア


住宅街などでは、駐車スペースがアスファルト舗装されていて、支柱を地面に挿すのが難しい場合があるかと思います。私のポタジェでは束石(つかいし)を利用しています。風などで倒れないようにある程度の重さが必要になるので、アンカーボルト付の束石(サイズ15㎝×15㎝・高さ12cm)を利用しています。
積雪のある地域では、雪が降る前に電気柵を撤去して、雪が解けたら再び電機柵を設置する手間がかかりますが、束石を利用すると設置や撤去などが簡単にできるというメリットもあります。

ポタジェ|野生動物の侵入を防ぐ!「電気柵」設置のアイデア

アンカーボルト付の束石(15㎝×15㎝・高さ12cm程度)

束石についているボルトは鉄製なので、そのままでは電気が流れてしまいます。それを防ぐために、ボルト部分に絶縁性のあるビニールテープを巻きます。そこに用意した支柱を縛りつけ、上からさらに絶縁性ビニールテープを巻いてしっかりと固定します。

ポタジェ|野生動物の侵入を防ぐ!「電気柵」設置のアイデア

あらかじめ、ボルト部分に絶縁性のあるビニールテープを巻いておき、そこに支柱を縛りつけてさらに絶縁性ビニールテープで固定する

ポタジェ|野生動物の侵入を防ぐ!「電気柵」設置のアイデア

アスファルト部分には束石を利用して、電気柵を設置している

また、束石をそのまま地面に置くと電気が地面に流れてしまうため、ポタジェでは天然ゴムでできた絶縁シートを敷いて設置しています。束石の大きさに合わせて絶縁ゴムシートを適当な大きさに切り、3枚ほど重ねて敷いて使用しています。
人や動物に漏電の影響はありませんが、電気柵の設置後に念のため検電器で確認すると安心ですね。電源を入れみて、電気柵キットに付属されている検電器で電圧を計測し、設置状態に異常がないか確認します。漏電していると電流が弱まり、正常な効果が得られなくなってしまいます。

ポタジェ|野生動物の侵入を防ぐ!「電気柵」設置のアイデア

絶縁ゴムシートを3枚ほど重ね、その上に束石を置いている

撤去するときのアイデア


電気柵専用の支柱を地面に挿して設置していた場合、撤去するときに穴をそのままにしておくと、翌年に穴を探したり、再度穴をあける手間がかかります。撤去した穴に目印となるような棒を挿しておくだけで、翌年の設置の際に効率よく作業することができます。私のポタジェでは、菜園で使用していて折れてしまった支柱を再利用しています。

ポタジェ|野生動物の侵入を防ぐ!「電気柵」設置のアイデア

折れてしまった支柱などを穴に挿しておくだけでの目印に

オシャレな印象になるアイデア


①束石をペンキで塗装する

菜園の雰囲気に合わせて、コンクリート製の束石にペンキを塗るだけもガラッと印象が変わります。例えば、私の場合は、ガーデンチェアを置いている場所(ポタジェに設けたテラス)はクリーム色のタイルを敷いているので、耐水性のクリーム色のペンキで塗装した束石を設置しています。アクセントになるような色を選んでも素敵ですね。

ポタジェ|野生動物の侵入を防ぐ!「電気柵」設置のアイデア

束石に耐水性のペンキを塗ってリメイク

ポタジェ|野生動物の侵入を防ぐ!「電気柵」設置のアイデア

雰囲気になじんでいる


②危険表示板が空間になじむ工夫

電気柵を設置した場合、「危険表示板」の取りつけが義務づけられています。ポタジェの中にプラスチック素材の黄色が目立ってしまうのが気になり、裏面だけに緑色のペンキを塗ったところ植物の色となじんでくれました。文字側に色を塗ることはできませんが、少しだけでもおしゃれにしたいものですよね。

ポタジェ|野生動物の侵入を防ぐ!「電気柵」設置のアイデア

「危険表示板」の設置は義務づけされている

ポタジェ|野生動物の侵入を防ぐ!「電気柵」設置のアイデア

裏面を塗料で緑色に。スプレー式のペンキを使用すると簡単に色づけできる

設置後のポイント!


設置後、果樹・木の枝葉や植物が成長して電機柵のワイヤーに触れてしまう場合がありますので、時々は電気柵の周囲を見て回り、植物の枝葉が触れていないか確認しましょう。特に、電気柵の下の雑草が伸びてワイヤーに触れると電気が地面に流れてしまうため、こまめに除草するようにしましょう。正常な効果が得られなくなってしまいます。
また、植物に触れても電流を感じることはありませんが、植物がワイヤーに触れるとその部分(茎や葉)だけが枯れてしまいます。

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雑草などの除草を忘れずに

草取りや菜園で作業する場合は、はじめに電気柵の電源を切ったことを確認し、周囲の草取りを行なったり、作業時には柵の入り口部分から出入りするようにしましょう。電気柵セットには入り口部分に設置するゲートハンドルが付属されています。※詳しい設置方法は、メーカーの説明書に記載されています。

ポタジェ|野生動物の侵入を防ぐ!「電気柵」設置のアイデア

入り口部分に設置するゲートハンドル。ここから出入りする

除草作業には、最近は女性でも扱いやすいコンパクトなコードレス草刈機などの便利アイテムもありますので、上手に活用しながら菜園を楽しんでくださいね。

美味しい野菜が育つ菜園は、野生動物にとっても“ごちそう”が育っている夢の空間なのかもしれません。できるだけ敵対せずに共存できたら素敵ですね。

プロフィール


藤井 純子
「Pure Potager(ピュア ポタジェ)」代表。ポタジェ・アドバイザーとして道新文化センター札幌校などのセミナー講師のほか、新聞・雑誌にて執筆活動を行なう。また、ポタジェの魅力を一冊にまとめた「Green Finger ポタジェ~小さな庭が与えてくれる恵みと幸せ~」を執筆。「コーチャンフォーミュンヘン大橋店」で取り扱いのほか、HPに掲載のネットショップを利用。またはAmazonでも販売、「ポタジェ」で検索。

HP  ピュア・ポタジェ 
Instagram pure.potager
YouTube ポタジェ『心と身体を癒す庭へようこそ』 @lifewithpotager401



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