2024/07/05 12:30
北海道生活
ハーバルライフ|初夏から盛夏に向かって、庭を彩るハーブの花々
まさに今、北海道のハーブガーデンで開花を迎えているハーブの種類について、ご紹介したいと思います。
このコーナーでは、香りを持つ植物の魅力に惹かれて、育てる、眺める、味わう―、日々の出来事をハーブ研究家のかりのあさのさんがつづります。
取材協力:かりの あさの さん(herbarist・ハーブ研究家)
北海道の夏のはじまりを彩る宿根草のハーブたち。それらが主役の庭を日々眺める今の時期は、私にとって一年で一番好きな時期です。ハーブの花たちも一気にスイッチが入ったように咲き出し、バラが花開く6月中旬からは、それはそれは美しい癒しの風景が広がります。
バラとハーブの花が一緒に咲く。香りもとてもよい
ハーブは繁殖力が旺盛で強健なイメージがありますが、花は小さく繊細なものが多く、とても可憐です。まさに今、花のシーズンを迎えているハーブたちと、組み合わせる植物についても一緒にご紹介したいと思います。
まずは、ハーブガーデンや宿根草ガーデンの定番、アルケミラ モリス。こぼれダネも数年後には開花する強さと美しさを持ち、そしてレモンイエローの涼しげな小花はエディブルフラワーとしても利用できます。
アルケミラ モリス
咲き始めがうっすら黄色っぽいマリーゴールド‘キリマンジャロ’との組み合わせは、色味がとても爽やか。マリーゴールドは背が高くなる切り花用の品種なので、埋もれるとこなく互いを引き立て合います。
アルケミラ モリスと一年草のマリーゴールド‘キリマンジャロ’との組み合わせ
ラムズイヤーは、シルバーリーフのやわらかな雰囲気が魅力です。「羊の耳」のような見た目と質感なので、この名前に。見つけたら、ぜひ触れてみてください。葉に触れるとうっすらミントのような香りがします。また、花穂はドライフラワーに利用できますよ。
ラムズイヤー
キャットミントはさまざまな品種があり、写真は大型に育つタイプのもの。すらっと伸びる花穂に、小さな花をたくさん付けます。名前にもあるように、ネコが好む香り成分を含んでいます。
キャットミント。写真は、大型に育つ品種
アルケミラ モリスとキャットミント、ラムズイヤーは、この3種類を近くに植えると、パステル調の素敵な風景ができあがります。ボーダーガーデンや街路ますなど、規則的なパターンで繰り返しの植栽をするときにおすすめです。
また、目を引く一年草の花とのコラボレーションもよいですね。アクセントが加わります。
アルケミラ モリスとキャットミント、ラムズイヤーの植栽
キャットミントと鮮やかな赤い花色のジニア
エルダーフラワーは、北海道でも越冬できる地域があります。イギリスでは春の定番、エルダーフラワーの花でつくるコーディアルシロップを、私もつくってみたくて数年前に植えてみました。
マスカットのような香りがする小花が集まって咲くのですが、たわわに実る姿を想像しています。今のところ、まだ収穫はできていません。
エルダーフラワーの明るい葉色がアクセントになる。花は6月に咲く
銅葉のエルダーフラワーもあります。グリーン以外の葉色の植物があると互いに引き立て合うので、庭の各所に植えています。花も咲かせてくれます。
細い銅色の葉のエルダーフラワー。とても細かな花が咲き始めている
ヤロウはノコギリソウとも呼ばれる、とても強健な植物。庭のあちらこちらで花を咲かせます。白い花以外にも赤系、オレンジ系、黄色系などの花色があります。葉には止血作用、抗ウィルス、抗炎症作用などが期待できます。ハーブティーとしても人気ですね。
背丈が高くなるので、一番花が終わったら半分くらいに刈り詰めると、背丈を抑えてこんもりと花を咲かせることができます。
ヤロウ
チャイブは、咲くと丸い姿が可愛いです。近づくとネギの香りがします。アブラムシ避けや抗菌作用を期待して、バラのコンパニオンプランツとして近くによく植栽されています。
アサツキに似たハーブで、球根でもタネでもよく増えます。
チャイブの開花し、可愛い姿
我が家の庭では、例年ですと6月にアブラムシがつき出すのですが、今年はほとんどいないです。皆さんの地域ではいかがでしょうか?
チャイブも素敵な風景をつくってくれます。チャイブとキャットミント、アルケミラ モリスの組み合わせも定番ですね。
また、チャイブの花が色褪せてくる頃に、勢いを増してくるのがスーパーサルビア。ブルーの花色が、くすんだチャイブの花と相性がよいです。
チャイブとキャットミント、アルケミラ モリスの組み合わせ
チャイブとスーパーサルビア
大型のアリウム ギガンチウムも庭の人気者ですね。すらっと伸びた茎の先に、ソフトボール大の球体の花を付ける姿がユニーク。よく見ると小さな花が規則正しく、みっちりと並んで咲き、丸い姿になっています。植物の不思議といいますか、配列をどのように記憶しているのかとても興味深いです。
アリウム ギガンチウムの大きな球体の花
アリウム ギガンチウム。宙に浮ているような、ユニークなアクセントに
フェンネルは、レースのような極細の葉を持ち、庭にやわらかな表情を加えます。ほかの花を包み込むように演出すると面白いですね。
アリウム ギガンチウムがフェンネルの細かな葉に包まれている
フェンネルは夏に向けて花を咲かせ、実を付けてやがてタネになり、フェンネルシードと呼ばれるスパイスになります。青い実は口の中がスッキリする風味。葉はお料理の飾り付けや、ハーブビネガーづくりにも利用できます。
ラビッジも、フェンネルと同じセリ科の大型ハーブなので、セロリに似た香りがします。実はハーブビネガーやハーブオイルの香りづけに利用しています。地植えでは人の背丈くらいに成長するので、大きくしたくない場合は鉢植えで育てることをおすすめします。
ラビッジの若芽。明るいグリーンの葉が印象的
ラビッジの実。花後に付ける実も、刻んでお肉料理の風味づけにどうぞ
つる性のホップやアピオスは、壁面やフェンスなどの演出に利用できます。
ホップは、ビールの香りがする松かさのような実を付けるのが楽しみの一つ。秋は株元まで切り詰めても、また翌年には勢いよく伸びてきます。ホップのつるは、地植えですと2階の屋根まで伸びるほど。そのため移植を考える人もいますが、根を動かして移植すると本来の成長スピードに戻るまで数年かかります。植え場所はしっかりと吟味しましょう。伸長を抑えたい場合は、鉢植えで育てると大きくなりすぎません。
アピオスは、可愛らしいワインレッドと白色の複色の花を付け、甘い香りが漂います。個性的な花姿になるので、アクセントになります。
ホップの実
アピアスの花
ハニーサックルもつる性植物ですが、ゴールデンハニーサックルはほかの品種よりもコンパクトに成長し扱いやすいです。白やクリーム系の花が可愛らしいですよ。
ゴールデンハニーサックル。繊細な花の姿も魅力
コモンマロウは、皆さんもご存じと思いますが、ハーブティーに利用できます。呼吸器の不調やデトックスが期待できます。
グラスに花を入れてお湯をそそぐと、きれいなピンク色に。そこにレモン汁やお酢を垂らすとブルーに変化します。無農薬で育てている方はぜひ試して、その色の変化を楽しんでみましょう。
コモンマロウ
イングリッシュローズの香りが気に入っているので、3種類ほど植えています。庭のクラウンプリンセス マルガリータが咲く頃に、蒸留器でローズウォーターを抽出するのが楽しみの一つ。
ミントやローズマリー、ラベンダーなども、精油成分が多いハーブで抽出したハーブウォーターに精油が浮きます。スキンケアやルームスプレーに利用しています。
クラウンプリンセス マルガリータ。美しい姿の花で、香りもとてもよい
蒸留器でローズウォータウォーターをつくる
庭に実がなるものがあると、足を運ぶ頻度が増えますね。
朝・夕の涼しい時間帯にのんびりと庭を見て回りながら、ラズベリーや足元のワイルドストロベリーを摘む。贅沢な時間を過ごせることに感謝する瞬間です。
ワイルドストロベリー。赤くなった実が可愛い
地植え以外にも、鉢植えでハーブの花を楽しむこともできますね。
サルビア ディスコロール(ディスカラーセージ)という黒花が咲く品種があるのですが、ユーフォルビアやベコニア ワッパー、へーべなどと組み合わせてシックな色味に仕上げ、夏に向けての開花を待っているところです。
花を楽しむハーブの寄せ植え
ご紹介したいものはまだまだあるのですが、またの機会に。次は、盛夏に咲くハーブの花たちもお伝えできたらと思います。
駆け足で花の季節が進む北海道のガーデンは、どこも見ごろが始まっています。お出かけの予定に、各地のガーデンを加えてみるのはいかがでしょうか。
プロフィール
かりの あさの
herbarist・ハーブ研究家。北海道札幌市内に在住。ハーブやアロマの指導員などの資格を有し、30年以上植物と向き合い得た知識・経験をもとに、企業のアンバサダーや商品開発に携わる。また、さまざまな講座開催や公共の場での「みどりのまちづくり」のサポートなど、幅広く「ハーブのある暮らしの魅力」を伝えている。
・かりのあさの lit.link(リットリンク)https://lit.link/karinoasano
HP「ハーブまるごと活用生活」、Facebook「かりのハーブcom」やInstagram「karinoherb」をまとめて掲載中