2024/07/06 10:30
北海道生活
北海道 宿根草の育て方|7月 盛夏は種類による花切りが大事
北海道のバラや宿根草、芝生や樹木、病害虫についてなど季節のお手入れ・管理をプロの皆さんが伝授。ここでは、「宿根草・草花」についてお伝えします。
文・写真:高林 初さん(苫小牧市・観光庭園 イコロの森)
種類による花切りで、秋まで魅力的な庭の演出を
北海道の7月は、色とりどりの宿根草が開花する盛夏ですが、近年は北海道でも高温や不安定な天気に悩まされるようになりました。
今回は、ガーデンが華やかなこの季節に行ないたい作業をお伝えします。
イコロの森では、エキナセアなどの宿根草が開花し、夏らしい花壇になる季節
イコロの森 ドライガーデン、6月下旬。アネモネ ウィルギニアナはやや乾燥気味の環境を好む
●除草は継続。勢力旺盛な宿根草もバランス調整を
この季節も除草作業は続きます。宿根草の中から出てくる背の高い雑草は、引き続き見つけたら随時取り去りましょう。
また、宿根草も勢力旺盛な種類がはっきりと分かるようになってきていると思います。バランスを見ながら適宜取り去りますが、来年の花壇もイメージしながら、ちょうどよい程度に作業するよりも、多めに除去しておくとよいでしょう。
●アリウムなどの球根の処理
アリウムやカマッシアなど、初夏に咲いた球根花の花切りが必要です。アリウムはそのまま植えっぱなしでも問題ありませんが、球根が増えて(分球して)花が混み合っていたり、「花が小さくなった?」と感じたりする場合は、球根を掘り上げて保管し、秋に腐植をたっぷり加えた土壌に新たに植えなおしてもよいでしょう。ポット苗で入手したアリウム(チャイブなど)は、ほかの宿根草と同様の扱いになるので、分球や植え直しの必要はありません。
カマッシアも混み合っているようであれば同様です。
・アリウム‛グローブマスター’の例
花後に茶色くなって残っている球体は、花茎ごと切り去ってください。
アリウム‛グローブマスター’の花後。このようになったら花茎ごと切り去ってよい
花が小さくなっていた球根を掘り上げてみると、分球して球根自体が小さくなっている。保管して秋に植え直すか、新しい球根を購入して追加してもよい
・アリウム’サマービューティ’の例
アリウム’サマービューティ’はポット苗で流通しており、ほかの宿根草と同様で植えっぱなしでよい品種です。
見ごろのアリウム’サマービューティ’。花後も宿根草と同様で植えっぱなしでよい
●宿根草の種類による花切り
宿根草の咲き終わった花は、随時花切りをします。種類によって、繰り返し開花するものや、もう咲かないもの、花後の結実を鑑賞したい種類などがありますので、それぞれの性質や好みに合った方法で行ないます。
①繰り返し開花しやすい種類
例:ケントランツス、スカビオサ、クナウティア、エキナケア、サルビア、ネペタ
咲き終わった花を次の花芽のすぐ上で切ります。見た目をきれいにし、次の開花を促しましょう。花数が多いネペタなどは、刈り込みバサミである程度の高さで刈り込んでもよいです。
サルビアの花切り。次の花芽のすぐ上で切り去る
エキノプス(ルリタマアザミ)も花切りをすることで次々と開花が続く
②今シーズンはもう咲かない種類
例:アルケミ モリス、アキレギア、ベルゲニア、ムラサキセンダイハギ、シレネ、ホスタ、アスチルベなど
花茎を株元から切り去ります。花茎に葉があり、すべて切ってしまうと花壇がさみしくなりそうな場合は、その葉のすぐ上で切り、完全に茶色くなってから株元で切る方法でもよいでしょう。
初夏を彩る定番のアルケミラ モリス。花後はタネもよく落ちるので、すぐに切り去るとよい
③花後の結実を楽しみたい種類
上記のどちらにも花後の結実を楽しみたい種類があり、それらは必ずしも花切りをする必要はないです。
ただし、まだまだ色とりどりの開花が続く季節です。茶色い結実が風景に合わないと感じる場合は、切り去ってよいでしょう。暑い季節に茶色い立ち枯れ姿を見ると、より暑さを感じることもあるので、好みに応じて演出するのが肝心です。
咲き方の特性に関わらず、夏までに開花し結実を楽しむことができる種類は、ギレニア、エキナセア、アスチルベ、アスクレピアス、モナルダ、ヘレニウム、ペンステモンなど。
ほかにも秋の姿が美しいと感じるものは多くあります。花が終わったら必ずすべての花がら切りをするのではなく、あえて残してみてどんな姿になるのか確認してみるのも楽しいです。自分だけの秋の庭の演出につながります。
・ギレニア トリフォリアタ(ミツバシモツケ)の例
風景を邪魔せず秋の結実も観賞価値が高いので、イコロの森では花切りをせずに残します。
ギレニア トリフォリアタの花後。秋の結実した姿も魅力的
・アスチルベの例
個性的な花の姿はもちろん、花後のシードヘッドまで楽しめるので、花切りをしないのがおすすめ。
開花中のアスチルベ
アスチルベのシードヘッド
●移植・株分けする株には印を
気温が上がる夏の季節には、作業は避けた方がよいでしょう。株分けや移植をしたいと思う株があれば、忘れないように印をつけておきます。秋か春の作業適期に行なう計画を立てておきましょう。
●必要に応じて添え木支柱で対応
背丈が高い宿根草がぐんぐん成長します。支柱が必要なものには、できれば春のうちに施しておきたいですが、できなかった場合は適宜添え木支柱などで対応します。雨の後は、株を優しく振って水滴を落としてあげたり、花後の花切りを行なって頭を軽くしてあげたりするだけでも、倒れにくくなるので試してみましょう。
茎に対して添え木支柱している例
花後のシードヘッドも観賞価値は高いですが、すべて残しておくと重くなり倒れやすいので、半分から3分の2くらいは取り去ると、軽くなって倒れにくくなります。
アネモネ ウィルギニアナの花が咲き終わった直後の姿。秋に向けて茶色くなる
恵庭はなふるのガーデン「ミチノモリ」
恵庭 花の拠点はなふるに、イコロの森が担当したガーデン「ミチノモリ」があります。盛夏のガーデンの様子をお伝え。撮影:昨年7月
アストランティアやゲラニウムが満開
エキナケア'フラ ダンサー’が開花。グラスも穂をあげ、風を感じる花壇の風景に
プロフィール
高林 初
英国Writtle College(リトルカレッジ)にてガーデンデザインを学ぶ。現在は、苫小牧市にある「イコロの森」の勤務、ヘッドガーデナー 。設計からメンテナンスまで庭づくりの幅広い経験をもとに、宿根草ガーデンの管理・栽培等を担当。
Instagram ikor_no_mori
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