2024/05/24 11:30
北海道生活
ハーバルライフ|北海道の里山の春 野草と渓流釣り
北海道・ニセコの春。穏やかな日差しに直物たちが成長中。今回は、春先に自然豊かな里山に足を運んで目にした植物たちをご紹介します。
このコーナーでは、香りを持つ植物の魅力に惹かれて、育てる、眺める、味わう―、日々の出来事をハーブ研究家のかりのあさのさんがつづります。「風葉香(ふうか)」は、風で葉っぱが揺れ香るハーブのことをイメージして。
取材協力:かりの あさの さん(herbarist・ハーブ研究家)
5月中旬を過ぎ、目を見張るほど植物の成長が著しくなりましたね。鶯(うぐいす)やカッコウの鳴き声を聞くと、なぜかワクワクします。庭の植物だけでなく、自然の山の植物たちもすくすく育っています。今回は、春先に自然豊かな里山に足を運んで目にした植物たちをご紹介します。
里山とは、人里近くにある生活にも結びついた山や森林のことで、春は山菜の採種などにも利用される山のこと。
札幌からニセコや道南エリアへ出向くことも多いので、地域に滞在しつつ春の里山散策や渓流釣りなどを楽しみました。ニセコエリアはもちろん、今金の美利河(ぴりか)地区近隣へ。山に入って見つけた野草や山菜など、春を感じる植物たちの撮影も。
雪が残る4月上旬の様子。渓流釣りのポイント
渓流には、まだ雪が残る3月下旬から下見をしに出かけていました。この時期は、笹薮(ささやぶ)は雪の下になっているので、雪が締まっていて歩きやすいですし、樹木はまだ芽吹いていないので見通しもよいです。渓流釣りのポイントを探すにはベストシーズンでもあります。
そして、カッコウや春蝉が鳴く頃、見つけたポイントへ出かけます。竿に伝わる魚の動きを感じながら釣り上げ、そしてリリース。これの繰り返しですが、魚とのやりとりを楽しめる自然がたくさんあることに感謝です。
30cmほどの魚体の美しいニジマス。釣ったら、また川へリリース
ニセコエリアはじめその近隣、毎週のように道内各地の渓流や山間部にも出向き、北海道にも訪れた春の始まりを満喫。子どもの頃から家族で山に行き、季節ごとに山菜採りをしてきた記憶と情報をフル稼働させました。
さて、野草や山菜類も、ご存じの通りハーブの仲間です。北海道ならではの植物も多く、山で目にするそれらの姿は、繁忙期に入る前の私の思考と記憶のスイッチを入れてくれます。自然の中で過ごす時間や空間は、私にとってエネルギー充電の場、そんな感じです。
行者ニンニク
強いニンニクの香りがするこの山菜は慈養強壮が期待できます。山の中では見落としそうな佇まいですが、収穫してみるといつも目にする行者ニンニクの姿です(笑)。収穫の際は、花芽が付いていないもの、二枚葉まで、株をすべて収穫せずに必ず残す、細くてか弱そうなものは見逃すなどの配慮もしたいところ。
味付ジンギスカンと一緒にいただくのが定番、という人も多いですね。美味しくて、いくらでも食べてしまいそうですが、匂いが残るので、翌日はお休みのときをおすすめします(苦笑)。
強いニンニクの香りを持つ
下処理して醤油漬けにしたり、定番の味付ジンギスカンと一緒に食べる人も多い
さて、山で見つけた野草たちです。エゾノリュウキンカとも呼ばれるヤチブキは、黄色い花が残雪や水辺に映えてよく目立ちます。茎の部分をおひたしや炒めものにしていただいています。ほんのりほろ苦い風味がクセになりますよ。
ヤチブキ(エゾノリュウキンカ)
水がきれいなところで育つ植物 葉わさびが、山の斜面を流れる小川の両脇にびっしり育っていました。可愛らしい小さな花が咲きます。
葉わさびが小川の縁にびっしりと育っていた
とても可愛い、白い花を付けている
生でも辛いですが、さっと湯通しすると辛味が増します。お醤油、お酢と一緒に漬けて常備菜として活用できます。
葉わさびの醤油漬け。ご飯のおとも、お酒のおともにもどうぞ
林や斜面で、カタクリの花が絨毯のように広がる姿は圧巻です。カタクリも食べることができて、アクが少ないので扱いやすいです。花も茎も、葉も一緒に茹でて、おひたしが一般的。
カタクリが林床に咲く
エゾエンゴサクのブルーとカタクリのピンクの花が一緒に咲くエリアを見つけると、花色の組み合わせがとてもきれいで、幸せな気持ちになります。葉が細長い、細葉エンゴサクという種類もあります。大きく育つまでの年数が長くかかる植物です。
エゾエンゴサク
エンレイソウにはいろいろ種類があります。エンレイソウ、シロバナエンレイソウ、ヒダカエンレイソウ、コジマエンレイソウ、オオバナエンレイソウなど、花色や大きさがさまざまです。登山をしなくても、里山で数種類見つけられます。
地上部や「実」は食用可だそうですが、私はエンレイソウは食さず眺める派です。
白花のエンレイソウ
こちらのエンレイソウは、ワインレッドの花色を持つ種類
林の中で、春先に白い花が群生しているのを見かけます。イチゲも品種がいろいろあり、キクザキイチゲ、アズマイチゲ、エゾイチゲ、ヒメイチゲなど。食べることはできず、観賞用として楽しみます。
キクザキイチゲ。清楚な白花を咲かせ、林床の一面に広がる
童謡の歌詞にも登場するミズバショウ。5月に入ると林床の水辺や道路脇の湿地にも咲き、各地で見られます。大きな花(苞)が目を引きます。この花(苞)が終わると葉が成長して、1m近くになるものも出てきます。毒性が強いので、眺めて楽しむ植物ですね。
ミズバショウ。大きな白い花(苞)が林床で目を引く
野生のミツバは、香りが強く大好きな野草の一つです。若い茎葉はやわらかく、おひたしや天ぷらのほか、かしわそばにネギと一緒に入れていただくと美味しいです。
ミツバには、ビタミンやミネラルが豊富に含まれています。デトックスや消炎、視力や美肌など健康に役立つ働きが期待できます。
ミツバ
イラクサを山で見つけたら、素手で触ってはいけません! チクチクヒリヒリが半日以上続きます。
素手で触るのは注意ですが、イラクサは「ネトル」とも呼ばれ、ビタミンが豊富なハーブの一つ。ハーブティーやスープの食材としても愛用されています。アレルギーの症状緩和も期待できます。
イラクサ。きれいな葉色・質感をしているが、素手で触るのは注意!
野生のスミレも、林道の脇のあちらこちらで目にします。ミヤマスミレ、サクラスミレ、シロバナスミレなど、たくさん種類がありますね。園芸品種のような華やかさはないけれど、野生種のシンプルで趣きある花の姿が魅力です。
野生のスミレ
大好物のタケノコも、釣りの道中にちょこちょこと収穫できました。採りたてをさっと茹で、お醤油をつけていただくのは贅沢な気分。大変な皮剥きを頑張った、ご褒美のようです。
収穫したタケノコ
フキとタケノコ、かまぼこや厚揚げを甘辛く炒めた一品は、小さな頃によく食べた味。一口食べると懐かしく思うのもちろん、自分たちで収穫してきた山菜を味わえることが、とても贅沢に感じます。
山菜料理。収穫した山菜など甘辛く炒めた一品
昨年、山へ出向いたとき、笹の花が咲いていたので気になっていましたが、道内各地で笹枯れが起こっています。時間ができたときに、道内各地を渓流釣りで回ったりしていますが、どこもかなりの面積が枯れ込んでいる様子。ある意味、そのおかげで見渡しがよく入渓しやすいのですが、環境に与える影響はどんなものなのか…気になるところです。
里山で育つ自生植物には毒性を持つものもあるので注意が必要です。また、山菜は子孫を残せるような採取の仕方を考慮する、山野草は特に貴重な種類も多いので眺めてカメラにおさめるのみ、などのマナーを守りながら自然の恵みに感謝しつつ楽しめるといいですね。
近年は熊の出没も増えて里山では気が抜けません。熊の生態を理解し、事前情報も集めて注意深く行動したいものです。
プロフィール
かりの あさの
herbarist・ハーブ研究家。北海道札幌市内に在住。ハーブやアロマの指導員などの資格を有し、30年以上植物と向き合い得た知識・経験をもとに、企業のアンバサダーや商品開発に携わる。また、さまざまな講座開催や公共の場での「みどりのまちづくり」のサポートなど、幅広く「ハーブのある暮らしの魅力」を伝えている。
・かりのあさの lit.link(リットリンク)https://lit.link/karinoasano
HP「ハーブまるごと活用生活」、Facebook「かりのハーブcom」やInstagram「karinoherb」をまとめて掲載中