2024/05/15 11:30
北海道生活
ポタジェ|ジャーマンカモミール こぼれダネから大株に育てるコツ
今回は、こぼれダネから育ったジャーマンカモミールの栽培のコツ、利用法などをご紹介します。
このコーナーでは、季節ごとの野菜やハーブ、果樹、お花など、相性のよいコンパニオンプランツを組み合わせながら育てて楽しむ“ポタジェのある暮らし”を紹介していきます。お料理や花のクラフトも。
文・写真:藤井 純子さん(ピュア・ポタジェ代表)
待ちに待った菜園のシーズンが始まりましたね! ポタジェでは、苗づくりの傍ら、4月末にジャガイモとエンドウ、春ダイコン、ラディッシュのタネまきをしつつ、行者ニンニクやアスパラ、ニラ、ヨモギなどの収穫が始まりました。今回は、世界中で最も親しまれているハーブの一つ「カモミール」について、中でもジャーマンカモミールの栽培や利用法などをご紹介したいと思います。
6月中旬になるとカモミールが満開に
カモミールの品種と特徴
カモミールにはいくつかの種類がありますが、ハーブとして使われるのは主にジャーマンカモミールとローマンカモミールです。この2つのカモミールのハーブティーは、香りと味は異なりますが効能は似ています。ストレスや不安を落ち着かせるリラックス効果のほかに、健胃作用にも優れているため、食べ過ぎたときや逆に食欲がないとき、便秘や下痢にも役立つといわれています。体を温める効果もあるため、風邪のひきはじめや冷え性の改善にもおすすめです。
●ジャーマンカモミール
キク科・一年草、草丈は約1m
学名:Matricaria recutita
一度植えると翌年もこぼれダネで発芽するほど容易に栽培できるジャーマンカモミール。冷涼な気候を好むため、北海道では花や野菜がまだ大きく育っていない6月初旬から白い可憐な花がいっせいに咲いて、ポタジェに彩りを添えてくれます。花托(かたく/中央の黄色部分)がこんもりとしてきたら、花の部分を収穫します。写真のように、花首(茎1cmほど付いた状態)で収穫。翌年もこぼれダネを活用する場合は、全部収穫せずに数株残し、枯れるまで育てましょう。そうすることで自然にタネが落ちて、翌年もこぼれダネが発芽してくれます。
花托(花の中心の黄色部分)がこんもりとした頃に花の部分を収穫
●ローマンカモミール
キク科・多年草、草丈は約10cm
学名:Anthemis nobile
私のポタジェでは、知人からいただいた白い小花が可愛らしい八重咲きのローマンカモミールを育てています。草丈は10cmほどと低く、カーペット状に横に広がりながら育ちます。お茶はジャーマンカモミールに比べるとやや苦みのある味わいです。
葉と花からリンゴのような香りがする
●ダイヤーズカモミール
キク科・多年草、草丈は約1m
学名:Cota tinctoria
ドライフラワーや染色に用いられるダイヤーズカモミールは、マーガレットのような花が咲きます。黄色の花はドライフラワーにしても色褪せしづらいので、リースなどの差し色にも重宝します。
花びらも花托も黄色いダイヤーズカモミール
※カモミールは、キク科の植物です。キク科植物にアレルギーのある方は、栽培や飲用にご注意ください。また、妊娠中の飲用は避けるようにしましょう。
カモミールの栽培 ~ジャーマンカモミールの例
ジャーマンカモミールは、一度植えるとこぼれダネから発芽するほど丈夫なハーブですが、そのまま育てていると年々茎が細くなってしまう場合があります。茎を太く大株に育てる秘訣は、鉢上げや移植すること。このひと手間で、その後の生育が格段によくなります。
さらに、こぼれダネはあちらこちらから発芽するため、そのまま育てるよりも1カ所にまとめて植え直したり、並べて植えたりしてあげると、ポタジェらしいおしゃれな印象になります。
ジャガイモの周囲をジャーマンカモミールで囲んだ様子
[ 植え直しの方法 ]
【1】苗を掘り上げる
雪解けとともに顔を出すジャーマンカモミールは、苗が3~5cmほどに生長したら移植ゴテを使って掘り上げます。
畑を耕す場合は、その前に掘り上げておく
【2】鉢上げする場合
ビニールポットに掘り上げた苗を入れ、培養土を加えたら、すぐにたっぷりと水を与えます。ジャーマンカモミールは涼しい環境を好むため、定植するまでは半日陰で管理し育てるようにしましょう。
ビニールポットに植える
植えたらすぐに、たっぷりの水を与えること
【3】移植する場合
掘り上げたカモミールをそのまま移植する場合は、軽く土を耕して株間15~20cmで定植します。移植後はたっぷりと水を与えます。苗に水がかからないように、苗の周囲に水をあげましょう。必要に応じて元肥を施してもよいですが、病害虫予防のためにも少なめに施しましょう。
土を軽く耕して、植え穴をつくる
掘り上げた苗を置く
深植えにならないように気をつけながら、周囲の土を入れて鎮圧。苗にかからないよう水やりも!
[ 注意が必要な病害虫 ]
ジャーマンカモミールは、花が終わる頃(6月末~7月)になるとアブラムシやうどんこ病が発生にしやすくなるので、花托がこんもりとしてきたら早めに収穫するのがおすすめです。
カモミールは、タマネギやキャベツのコンパニオンプランツで、タマネギやキャベツにつくアブラムシなどがカモミールにつき、天敵(テントウムシなど)の住みかになってくれるといわれています。カモミールが「畑のお医者さん」と呼ばれているのは、ほかの植物につく病害虫を防いでくれるためかもしれませんね。白い粉がついたように見える“うどんこ病”の予防には、風通しをよくすることと、麦(エンバクなど)の混植が効果的です。
茎にアブラムシがついている
白い粉状に見えるのは“うどんこ病”
[ 収穫の仕方 ]
花托がこんもりとしてきたら適宜収穫をしていきます。一つひとつ花を摘んでもよいですが、たくさん育ている場合は、イラストのように2~3段目の茎(節)からカットして、日陰のベンチなどに座りながら花の部分を取れば、カモミールの香りに癒されながら作業できますよ。
2~3段目でカットする
ジャーマンカモミールを利用しよう
収穫したジャーマンカモミールは、水をためたボウルに入れて押し洗いします。それを2~3回繰り返し、汚れを落としましょう。ドライにする場合は、ザルなどに広げて1週間ほど自然乾燥にします。その後、低温のオーブン(約150℃)で約10分加熱してからガラス瓶に保存します。食品用の乾燥材を一緒に入れると安心です。
重ならないように広げて自然乾燥させる
ハーブがポタジェや庭で育っている時期は、ぜひフレッシュハーブティーを味わってみましょう。カモミールにレモンバームやミントをプラスすると、優しく爽やかな味わいになります。ドライにしたカモミールを使った豆乳カモミールティーは、眠れない夜や風邪のひきはじめにおすすめです。
●豆乳カモミールティー
鍋に豆乳(180ml)とドライのジャーマンカモミール(大さじ1)を入れて火にかけます。沸騰直前で火を止め、ふたをして2~3分蒸らし、茶こしで濾(こ)してできあがり。ゆっくりと香りを感じながら味わってみてくださいね。
好みではちみつなどを入れてもOK
●チンキ
チンキとは、ハーブの有効成分をアルコールで抽出する方法で、水溶性と脂溶性両方の成分を取り出せるのが特徴です。清潔なフタ付きのガラス瓶に乾燥したジャーマンカモミール(約10g)を入れて、40度以上のウオッカ(200ml)を注ぎます。冷暗所に置き1日1回、瓶を振ります。2週間~1ヵ月経ったら、ガーゼや茶こしなどで濾しましょう。
できあがったチンキは、ハーブティーに数滴垂らして内服したり、大さじ2~3杯のチンキをお風呂に入れれば、手軽にハーバルバスを楽しむこともできます。アルコールを使うチンキは、1年ほどと長く保存できるのも魅力です。
漬け込み後のチンキは、褐色になる(写真中央)
カモミールは育てやすく丈夫な植物ですが、移植や鉢上げなどひと手間かけるだけで生育が格段によくなります。おすすめした、清楚な白い花が咲くジャーマンカモミールをぜひ暮らしの中に取り入れてみてくださいね。
次回は、「カラーの寄せ植え」をご紹介したいと思います。
プロフィール
藤井 純子
「Pure Potager(ピュア ポタジェ)」代表。ポタジェ・アドバイザーとして道新文化センター札幌校などのセミナー講師のほか、新聞・雑誌にて執筆活動を行なう。また、ポタジェの魅力を一冊にまとめた「Green Finger ポタジェ~小さな庭が与えてくれる恵みと幸せ~」を執筆。「コーチャンフォーミュンヘン大橋店」で取り扱いのほか、HPに掲載のネットショップを利用。またはAmazonでも販売、「ポタジェ」で検索。
HP ピュア・ポタジェ
Instagram pure.potager
YouTube ポタジェ『心と身体を癒す庭へようこそ』 @lifewithpotager401