2024/01/06 10:30
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北海道 宿根草の育て方|1月 庭の環境による寒さ対策と温室管理
北海道のバラや宿根草、芝生や樹木、病害虫についてなど季節のお手入れ・管理をプロの皆さんが伝授。ここでは、「宿根草・草花」についてお伝えします。
文・写真:高林 初さん(苫小牧市・観光庭園 イコロの森)
雪のお布団やマルチングによる防寒と 掘り上げた株の温室管理
北海道の多くのエリアでは、今の時期は花壇が雪に覆われています。
雪には保温効果があり、土中の温度が0度くらいで安定的に保たれるので、宿根草も安心して越冬することができます。
しかし、雪が少ないエリアやその年の気候によっては、この季節になってもまだ積雪がない場合があります。特にここ数年は気候変動の影響か、そのような状況が見られることも増え、一度積もった雪が解けてしまうなんてこともあります。
積雪がわずかで、保温効果があまり期待できない「イコロの森」(現在のガーデンの様子)。耐寒性の強い種類選びや、秋のマルチング作業がとても大切になる
別の年、2020年は1月になっても積雪がなかった…
実際、「イコロの森」でも1月に一度積もった雪が解けてなくなり、残った雪解け水が凍ってしまうこともありました。このようなときは、腐葉土やバーク堆肥、ウッドチップなどを株周りにたっぷりと被せて(マルチングして)、防寒対策を行なってあげるとよいでしょう。2月初旬までは気温がぐっと下がることがあり、積雪がなければ一気に土壌の温度が下がって凍ってしまい、宿根草の根が傷むこともありますので、注意が必要です。
マルチングは株の大きさよりも2周りくらい大きく、15cm程度の厚みで被せると安心でしょう。
雪解け水が溜まって、凍ってしまった場所もある。このような場所には耐寒性が強いことはもちろん、耐湿性の高い種類を植えたほうが上手く育つ
耐寒性に不安がある種類には、このようにたっぷりマルチングを施す。冬越しに心配のある場所や凍ってしまうような場合にも、同様に対策できる
イコロの森では、庭から掘り上げた苗の株分けやポット苗の手入れを温室で行なっています。温室といっても、今年はボイラーを稼働せず暖房機なしでの越冬に挑戦中。根をいじれば寒さに当たるリスクがあるので、慎重に行なっています。よい場所が見つかれば、工夫次第で冬の間に株分けや鉢緩め(一回り大きな鉢に鉢替え)などの作業も可能になりますよ。
温室での冬の株分け
イコロの森では、秋に掘り取った苗を温室で保存しておきます。外での庭作業ができなくなったら、今度は温室での株分け作業が始まります。
秋に掘り取った苗
株分けを行なう際は、まず根の周りの土を丁寧(ていねい)に取り除きます。自然に分解できるものはなるべく根を切らないように分けていきます。
株をゆすったり、土と根をほぐしたりしながら土を落とす
自然と土と根を分解できるようなら、根を切らないよう株を分ける
すでに新芽が見られるものもあります。鉢に植え直したら、寒さに当たらないように細心の注意を払いながら管理します。
株元に、すでに新芽ができている
鉢やトレイに植え直したら、シートをかけるなどして少しでも保温を!
長い冬の間管理していくには、最高気温と最低気温を記録してくれる温度計は大変便利。イコロの森ではこれを記録して蓄積しておき、冬場の管理に生かしています。地味な作業ではありますが、管理する環境を知ることは大切ですし、育てている植物の性質を知ることにもつながります。毎日のチェックとリセットも忘れずに。
最高気温と最低気温を記録してくれる温度計
室温によっては複数のシートを利用してさらに保温効果を高めることで、暖房を使わない越冬に挑戦中!
プロフィール
高林 初
英国Writtle College(リトルカレッジ)にてガーデンデザインを学ぶ。現在は、苫小牧市にある「イコロの森」の勤務、ヘッドガーデナー 。設計からメンテナンスまで庭づくりの幅広い経験をもとに、宿根草ガーデンの管理・栽培等を担当。
Instagram ikor_no_mori
HP イコロの森