2023/12/07 10:30
niwacul
北海道 宿根草の育て方|10月 深まる秋と宿根草の魅力的な姿
北海道でガーデニングを楽しむための、バラや宿根草などの植物、病害虫についてなど季節のお手入れ・管理をプロの皆さんが伝授。ここでは、「宿根草・草花」についてお伝えします。
文・写真:高林 初さん(苫小牧市・観光庭園 イコロの森)
深まる秋のガーデンと、シーズン最後も魅力的な宿根草たち
花が終わった植物は、葉が茶色くなりタネも黒くなっていますが、秋の日差しにキラキラと輝いているように見えます。
宿根草は、一年草と違って一つひとつの開花期間は短いです。その反面、春に新芽が出始め、葉が展開し、鮮やかな花が咲いたあとには、今度は個性的なタネの姿を見せて葉は茶色く枯れていく、それぞれの段階に独自の魅力があります。
9月下旬の「イコロの森」。シードヘッドとまだ開花中の花が美しい風景をつくる。写真はアスチルベとスッキサ プラテンス。よい組み合わせが見つけられると、花合わせの選択肢も広がる
さらに秋が深まり段階が進むと、タネを付けて葉色が変わっていき違った魅力を見せる
いよいよ北海道の短いガーデニングシーズンを締めくくる季節となりました。
立ち枯れた宿根草は冬を迎える前に刈り込み作業が必要になりますが、いったん手を休めて、ゆっくりと枯れゆく姿を愛で、秋の輝かしい庭の風景を堪能してみてはいかがでしょう。
シーズン最後の姿も魅力の宿根草
アスクレピアスのタネ
ここからは「イコロの森」のガーデンで、シーズン最後も美しい姿を見せてくれる宿根草をご紹介しましょう。
アスクレピアスは、鞘(さや)の中に規則正しくタネが並んでいますが、季節が進むとさらにその中から綿毛が出てきます。白く変化した鞘と茶色いタネ、ふわふわの綿毛が秋の暖かい日差しを浴びて輝く姿は必見です。
アスクレピアスの背後にあるのはアスター。アスターはタネが黒い点々のように残り、そのコラボも見逃せない
アネモネ ウィルギニアナは、開花後に緑色のラグビーボールのような形のタネが個性的ですが、今の季節には茶色くなり、白い綿毛が出てきます。ただし、こぼれダネでよく増えるので注意が必要です。
アネモネ ウィルギニアナ。花のないガーデンで白い綿毛のシルエットが際立つ
ユーフォルビア ポリクロマは落葉性の種類です。5月に花を咲かせたあとも、緑色の葉がずっとガーデンの花々を下支えしてくれる貴重な植栽。秋の紅葉も美しく大活躍です。
一方、ユーフォルビア ミルシニテスは常緑なのでこの先も緑葉のまま。特徴的な葉に霜が降りる朝は、さらに不思議な魅力を発揮します。
ユーフォルビア ポリクロマは花後の葉も、紅葉する葉も足元の演出に一役
ユーフォルビア ミルシニテス。常緑なので葉を落とすことなく冬を迎える。葉に白い霜がつくと、浮き立つようなコントラストの美しさ
ホスタは種類によって違いはあるものの、秋になると黄葉するものが多いです。日陰に植えることの多いホスタ。周囲の木々の紅葉とのコンビネーションもよく、木々の落葉後、シーズン最後に思い切り日差しを浴びて黄金色に輝きます。最後の最後までその魅力を楽しんでください。
鮮やかに黄葉するホスタ
黄色くなった葉が、庭の中で日差しを浴びて魅力を増す
アガパンサスのシードヘッド
精巧な木工細工のようなギレニア トリフォリアタのシードヘッド
イリス(アイリス) シビリカのシードヘッド。風に揺れると中のタネがカサカサと鳴るのも面白い
スタキスとエキナセアのシードヘッド
ホスタも種類によってはシードヘッドを楽しむことができます。「ホスタは花はいまいち、葉を鑑賞するために植えている」と割り切っている方もいるようですが、種類によって花やタネの姿は異なります。もう一度観察してみて、新しい美しさを発見してみるのもよいでしょう。
ホスタのシードヘッド。花を切らずに残してみると、種類によりその姿はいろいろ
そのほか、オミナエシはシードヘッドが花のような形状で残って可愛らしいですし、小さなタネは白い皮に包まれていて花びらのようにも見えます。
オミナエシのシードヘッド
宿根草はそれぞれの段階的な変化をじっくりと見守ってみると、華やかなものと簡素でつつましいもの両方の美しさを発見し、喜びに気づくことがあります。そのどちらも儚い美しさなんだと気がつくとまた、その一瞬一瞬に感動するようになり、植物の選び方や管理の方法も変わってくると思いますよ。
プロフィール
高林 初
英国Writtle College(リトルカレッジ)にてガーデンデザインを学ぶ。現在は、苫小牧市にある「イコロの森」の勤務、ヘッドガーデナー 。設計からメンテナンスまで庭づくりの幅広い経験をもとに、宿根草ガーデンの管理・栽培等を担当。
Instagram ikor_no_mori
HP イコロの森