2025/02/28 15:00
北海道生活
ポタジェ|菜園の準備スタート「苗づくり」~タネまき編
外はまだ雪景色ですが、春に向けた菜園の準備スタートです。今回は、苗づくりのタネまきの方法をご紹介。
このコーナーでは、季節ごとの野菜やハーブ、花や果樹など、相性のよいコンパニオンプランツを組み合わせながら育てて楽しむ“ポタジェのある暮らし”を紹介していきます。お料理や花のクラフトも。
文・写真:藤井 純子さん(ピュア・ポタジェ代表)
今回は、今シーズンの菜園の準備「苗づくり」のタネまきの方法をご紹介したいと思います。
苗づくりには「苗半作(なえはんさく)」という言葉があり、“丈夫でよい苗をつくれば、半分は成功したようなもの”といわれています。それだけに苗づくりは重要で技術も必要ですが、コツをつかめば室内でも苗づくりをすることができます。慣れてきたら珍しいタネを取り寄せて栽培できるので、楽しさも広がりますね。
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ブッシュバジルの苗
苗づくりの“育苗の基本”
◆タネ袋をチェック!
まずはじめに、基本を押さえておきましょう。一般的にタネの袋には、タネまきの時期や定植時期、学名・科名、発芽率などのさまざまな情報が記載されています。情報が足りない場合はネットなどで検索すると安心です。隅々まで目を通して参考にしてください。
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タネ袋にさまざまな情報が記載されている
特に注目したいポイントは発芽温度と生育温度、好光性種子か嫌光性種子かの記載です。
・好光性種子:発芽に光が必要な種子
アリッサム、ペチュニア、ベゴニア、レタス、ミツバ、シソなどは基本的に覆土をしません。
・嫌光性種子:発芽に光が不要な種子
コスモス、サルビア、ヒマワリ、トマト、ネギ、ダイコン、ウリ類などは種の大きさの2~3培の覆土をします。
◆育苗期間について
植物の種類によって育苗期間は異なりますが、タネまきをしてから5~10日ほどで発芽し、そのまま1カ月くらいセルトレーで育てたあと、ビニールポットに植え替えをして、さらに1カ月ほど育ててから畑やプランターに定植します。
一般的に、サイズが小さいタネは生育に時間がかかり、大きいタネは早く生育する傾向がありますが、ご自宅の栽培環境によって大きく変わります。定植時期よりも早く苗が育ってしまったり、逆に定植時に苗が小さすぎることのないように、毎年データをとるのがおすすめです。
タネまきの道具
・タネまき用の土
タネまきに向く土は、培養土に比べて肥料分が少ない「タネまき専用土」を使用するとよいです。
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タネまき専用の土を使用すると便利
・タネまき用の容器
さまざまな種類がありますが、植物の種類に応じてセル(マス目)の大きさを選びましょう。一般的には、タネが小さい花苗などはセルが小さいセルトレーを使用しますが、カボチャなどのウリ科はセルが大きいトレーを使います。
セルトレーは、必要な分を切り取って使うのもよいでしょう。卵のパックやプラスチックでできたお弁当容器なども活用できます。
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セルトレーは使用後に土などを洗い流してきれいにしておけば、数年使用することが可能
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フタつきのお弁当容器は、発芽するまでの間、フタをしておくと保温効果も期待できる
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セル(マス目)が小さいセルトレーは、花苗などをつくるときに使用
・底面給水トレー
3~5cmほどの深さのあるトレーを用意しましょう。溝(みぞ)があるものは水はけがよくおすすめです。
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深さ3~5cmほどのトレー
そのほか、用意しておくとよい道具類は以下の通りです。
・ピンセット
・厚紙
・ネームプレート
・ペン
・ハサミ
・ジョウロ
・スプレー(霧吹き)
・新聞紙やキッチンペーパー、ラップ
・ビニールシート
・ビニール手袋
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苗のトレーの下に敷くビニールシートもあると便利
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あらかじめネームプレートに品種名、播種日(タネをまいた日付)を記入しておく
タネまきの方法
【1】
セルトレーにタネまき用土を均一に入れます。少なくなりがちな四隅も意識して入れましょう。土を入れたら指の腹で軽く押さえながら土の量を確認して、少ないところには土を補充します。
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焦らず、丁寧(ていねい)に作業しよう
【2】
タネをまいていきます。セルトレーの左上のセルから下に向かってタネまきしながら進んでいくと、数種類のタネをまくときにも間違いを防ぐことができます。
タネまきするときは、ピンセットや厚紙を使ってセルの中心にタネを置きます。このとき、手袋などはせず素手で行なうと細かな作業がしやすくなりますよ。まき終わったら、すぐにネームプレートを挿しておきましょう。
[ タネの量の目安 ]
・大きめのタネは、1マスに1~2粒
・小さめのタネは、1マスに3~5粒
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イタリアンパセリやバジルは、1つのセル(マス目)に3粒ほどタネをまく
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厚紙を利用すると分かりやすい
【3】
タネを全部まいたら、軽く押さえます。こうするとタネと土が密着するので、根が伸びやすくなり、生育がよくなります。
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軽く押さえておくと生育がよくなる
【4】
覆土(土を被せる)をします。好光性種子は薄めに覆土し、嫌光性種子はタネの大きさの3倍程度の覆土をして軽く鎮圧します。鎮圧することで、発芽した際の倒伏を防ぐ効果があります。
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光性種子には薄めに覆土する
【5】
吸水させます。タネをまいたセルトレーを底面給水トレーに置き、ぬるま湯(35℃前後)を注ぎます。タネまき用の土は軽いため、上から水を与えるとタネが流れてしまいます。トレーの周囲からゆっくりと注ぎ、水が土にしみ込んだらトレーに残った水は捨てましょう。
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35℃前後のぬるま湯を注ぐ
【6】
セルトレーの上にキッチンペーパーや新聞紙をのせてスプレーで水を噴霧し、発芽するまでは土の表面が湿っている状態をキープします。発芽温度は20~25℃の植物が多く、あたたかい場所に置くと早く発芽してくれるので、我が家ではトレーをラップで覆ってストーブの近くに置いています。発芽したらすぐにキッチンペーパーやラップを取り除き、日当たりのよい場所に移動します。
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発芽するまでは水切れに注意
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発芽したら日当たりのよい場所へ移動。写真はバジルが発芽した様子(可愛い)
◆残ったタネは?
袋の切り口を折り、マスキングテープなどで止めてから冷暗所に保存しましょう。発芽率は落ちますが、翌年に使用することができます。
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マスキングテープで止めて冷暗所へ
発芽後の管理のポイント!
発芽前と発芽後では管理の方法が少し違います。春に向けた室内管理において、徒長を防ぐポイントをお伝えしておきます。
① 適温で管理
発芽温度は20~25℃程度と高めの温度ですが、発芽後はそれよりも少し低い20℃前後で管理しましょう。
② 昼間はしっかりと日光を当てる
植物は葉で光合成をして、根や茎など自身の体を大きくします。できれば4~5時間は日光が当たる場所に置くようにしましょう。
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我が家では東向きの出窓に置いている
③ 夜は暗い環境にする
夜は植物も眠る時間です。室内の照明が当たらない場所に移動するか、段ボールなどで覆うなどの工夫をしましょう。
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我が家では遮光シートを窓に張っている
④ 水分を控えめに!
発芽後は、土が乾燥していたら水分を与えます。指で土を触ってみて乾いているようなら、底面給水トレーにぬるま湯(35℃前後)を注ぎます。水分が多くいつも湿っていると根腐れになる場合がありますし、根は水分を求めて伸びる習性がありますので、少し乾燥気味に管理するのがコツです。
⑤ もし徒長したら
徒長しないように気をつけていても、茎が伸びてしまう場合があります。そんなときは、スプーンなどで土を補充すると苗が安定しますよ。
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小さなスプーンで土を補充する
苗づくりは、コツと愛情があれば意外と簡単に育てることができます。「芽が出た!」「本葉が出た!」と日々成長していく様子を眺める楽しさがありますよ。
次回は、育苗中に行なう「鉢上げ」などについてご紹介したいと思います。
プロフィール
藤井 純子
「Pure Potager(ピュア ポタジェ)」代表。ポタジェ・アドバイザーとして道新文化センター札幌校などのセミナー講師のほか、新聞・雑誌にて執筆活動を行なう。また、ポタジェの魅力を一冊にまとめた「Green Finger ポタジェ~小さな庭が与えてくれる恵みと幸せ~」を執筆。「コーチャンフォーミュンヘン大橋店」で取り扱いのほか、HPに掲載のネットショップを利用。またはAmazonでも販売、「ポタジェ」で検索。
HP ピュア・ポタジェ
Instagram pure.potager
YouTube ポタジェ『心と身体を癒す庭へようこそ』 @lifewithpotager401